Foothold Japan · 翻訳調の診断と直し方FHJ · コラム · 2026年7月
翻訳調 × 日本語品質

【翻訳調とは】ビジネス文書の診断チェックリストと直し方

English version: Translated Into Japanese ≠ Built for Japan →

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翻訳調とは、翻訳した文章に原文(主に英語)の構文・語順・言い回しがそのまま残り、日本語として不自然に読める文体のことです。誤訳とは違い、意味は正しく文法ミスもないのに「読みにくい」「お客様に見せられない」と言われるのが特徴で、英語ではtranslationese(トランスレーショニーズ)と呼ばれます。原因は単語の選び方ではなく、無生物主語・受動態・代名詞・情報の順序といった文の骨格に残る英語です。この記事では翻訳調の意味、10項目の診断チェックリスト、直し方の5つの手順を順に解説します。

本社の英語ブログやケーススタディをAI翻訳で日本語化したら、営業から「このままではお客様に見せられない」と言われた。読み返しても文法の間違いは見つからず、何をどう直せばいいのか分からない。外資・海外企業の日本チームでコンテンツの日本語化を任されると、ほぼ全員がこの壁にぶつかります。その違和感の正体が翻訳調です。

この記事は、外資・海外企業の日本語コンテンツを主戦場として、翻訳調の意味・診断方法・直し方を整理したものです。「翻訳調」は文学の翻訳論でも使われる言葉ですが、ここで扱うのは小説の文体論ではなく、ブログ・導入事例・サービスページといったビジネス文書の話です。社内に日本語の品質を判断できる先輩がいなくても、自分でチェックできる状態をゴールにします。

菅生晃大
執筆者
菅生 晃大(Foothold Japan)

SEO記事1,500本以上の企画・編集・執筆と、導入事例インタビューの制作を手がけてきました。海外企業の日本市場向けコンテンツを日本語ネイティブで制作し、海外本社への英語レポートまで一貫して担当しています。

目次を表示
  1. 翻訳調とは何か(意味と定義)
  2. 翻訳調の文体が生まれる仕組み
  3. 翻訳調の診断チェックリスト10項目
  4. 架空の例で見る翻訳調のビフォーアフター
  5. 翻訳調の直し方5つの手順
  6. 機械翻訳・AI翻訳との賢い付き合い方
  7. よくある質問
  8. まとめ

翻訳調とは何か(意味と定義)

翻訳調とは、翻訳した文章に原文の構文や語順が残り、日本語として不自然に読める文体を指す言葉です。誤訳とは違います。意味は正しく伝わりますし、文法的な誤りもありません。それでも日本語ネイティブが読むと「日本語っぽくない」と感じる。この違和感の正体が翻訳調です。

もともとは文学翻訳の用語

翻訳調という言葉自体は、文学の翻訳論に由来します。明治期以降、西洋の小説を日本語に訳す過程で生まれた独特の文体(「彼は彼の帽子を取った」のような言い回し)を指して使われてきました。文学の世界では、原文の雰囲気を残す表現手法として、あえて翻訳調が選ばれることもあります。

ビジネス文書での翻訳調の意味

一方、ビジネス文書の翻訳調に演出としての価値はありません。読み手である顧客や見込み客にとって、翻訳調の文章は「機械で訳しただけの文章」「日本語をきちんと見る人がいない会社」というシグナルになります。特にBtoBでは、この印象が製品やサポート体制への信頼まで引きずり下げるのです。やっかいなのは、文法チェックやネイティブチェックの「間違い探し」では検出できないのに、読み手には最初の数行で伝わってしまう点でしょう。

翻訳調は英語でなんと言う?

英語ではtranslationese(トランスレーショニーズ)と呼びます。translation(翻訳)に、ぎこちなさを揶揄する接尾辞の-eseが付いた言葉で、英語圏でも「翻訳されたと分かってしまう文章」を指す否定的なニュアンスで使われます。本社の上司やマーケティングチームに状況を説明するときは、"The Japanese copy reads like translationese." と伝えると一言で通じます。

翻訳調の文体が生まれる仕組み

翻訳調は、翻訳者やツールの日本語力が低いから生まれるわけではありません。単語を正しく置き換えても、文の骨格に英語が残るために生まれます。骨格に残る英語は、大きく2つの層に分けられます。

文の層で残る英語の構文

無生物主語(Our platform helps you...)、受動態、代名詞(you / we / it)、関係代名詞による長い修飾。どれも英語では自然な構文ですが、日本語での使用頻度はずっと低いものです。翻訳では原文の構文を保ったまま単語だけが日本語になるため、「私たちのプラットフォームはあなたのチームを助けます」のような、意味は分かるのに誰も書かない文が量産されます。

文章の層で残る英語の情報順序

英語のビジネス文書は結論を先に置き、主張してから根拠を並べる構成が標準です。日本語のビジネス文書では、状況や課題を共有してから提案に入る流れのほうが読み手に受け入れられやすいとされています。翻訳は文単位で進むため、この段落レベルの順序はそのまま残ってしまいます。一文一文をきれいに直しても文章全体の「形」が英語のまま、という現象が起きるのはこのためです。

機械翻訳・AI翻訳で翻訳調が目立ちやすい理由

機械翻訳やAI翻訳の精度は年々上がり、文法的な誤りはほとんど見かけなくなりました。ただし、翻訳ツールは原文に忠実であろうとするほど、構文と情報順序を保存します。つまり「正確なのに翻訳調」という出力は、ツールの欠陥ではなく仕様に近いものです。ツールを責めても解決しないので、後工程での診断と直しを前提に組み込む必要があります。

翻訳調の診断チェックリスト10項目

手元の訳文が翻訳調かどうかは、次の10項目で診断できます。3項目以上当てはまれば、顧客向けに出す前に直したほうがよい水準と考えてください。表の例文はすべて架空のもので、実在の企業・文章ではありません。

No.チェック項目翻訳調のサイン(架空の例)
01無生物主語の多用「このツールは、あなたの業務を改善します」。道具や概念が人のように動作の主語になっている
02受動態の多用「データは自動的に同期されます」「レポートが生成されます」が連続する。英語の受動態の直訳
03代名詞の残存「あなた」「私たち」「それ」「彼ら」が頻出する。日本語では省略するのが自然
04「〜することができます」の頻発canの直訳。「〜できます」で足りる場面がほとんど
05英語記号の残存「—」(emダッシュ)やセミコロン、文中の「!」が残っている。いずれも日本語のビジネス文書では使わない記号の代表
06カタカナ語の過剰「ソリューション」「レバレッジ」「イネーブルする」など、訳さずカタカナにしただけの語が続く
07一文が長い関係代名詞の直訳で修飾が積み重なり、読点だらけの長文になっている
08誇張表現の直訳「素晴らしい」「信じられないほど強力な」。英語のamazing文化の直訳で、日本の読み手にはかえって疑わしく響く
09命令形の呼びかけ「今すぐ始めましょう」「無料で試そう」。英語CTAの直訳で、日本のBtoBでは唐突に感じられる
10文体・トーンの揺れ段落ごとに軽い口調と硬い口調が混ざる。原文の勢いに引きずられた跡

10項目に共通するのは、どれも文法的には正しいという点です。校正ツールにも、ネイティブチェックの間違い探しにも引っかかりません。診断の問いは「間違いがあるか」ではなく、「日本語で書き下ろした文章に見えるか」です。なお、当サイトには英語版のセルフ診断クイズ Translated or Built? Quiz(英語) もあります。上司と一緒に確認したいときはそちらが便利です。

AI翻訳で作った日本語、このままお客様に出して大丈夫か不安ですか? 御社のコンテンツが翻訳調になっていないか、無料で読んで書面でお答えします。上司にそのまま共有できる英語ページもあります。

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架空の例で見る翻訳調のビフォーアフター

チェックリストの項目が実際の文章でどう見えるのか、直すと何が変わるのかを2組の例で確認します。いずれも架空の例であり、実在の企業・製品・文章ではありません

Exhibit 1 · SaaSのサービス紹介文架空の例
Before · 翻訳調

私たちのプラットフォームは、あなたのチームがより良い意思決定を行うことを可能にします。データは自動的に収集され、リアルタイムで分析されます。今すぐ無料トライアルを始めましょう!

診断結果。無生物主語(項目01)、「行うことを可能にします」というcanの直訳変形(項目04)、受動態の連続(項目02)、「私たち」「あなた」の残存(項目03)、「!」と命令形CTA(項目05・09)。チェックリスト5項目に該当します。

直すと
After · 日本語として書き直し

会議のたびに、数字を集め直していませんか。データの収集から分析までを自動化し、チームがその場で判断できる状態をつくります。まずは資料をご覧ください。

直しの要点。読み手の課題から入る順序に組み替え、主語を人と行為に戻し、CTAを命令ではなく案内の形にしています。情報量はほぼ同じでも、受ける印象は大きく変わります。

Exhibit 2 · 導入事例の顧客コメント架空の例
Before · 翻訳調

私たちは、このツールが私たちの働き方を変革したと確信しています。それはシンプルで、パワフルで、信じられないほど直感的です。

診断結果。「私たち」の重複(項目03)、カタカナ形容の連打(項目06)、「信じられないほど」という誇張の直訳(項目08)。日本の顧客のコメントとしては不自然で、事例全体の信ぴょう性を下げてしまいます。

直すと
After · 日本語として書き直し

決め手は、現場のメンバーがマニュアルなしで使い始められたことでした。導入後は、働き方そのものが変わったと感じています。

直しの要点。抽象的な形容詞を具体的な事実(マニュアルなしで使えた)に置き換え、日本の担当者が実際に口にする語り口へ寄せています。誇張を削るほど、かえって説得力が上がるのが日本語の事例の特徴です。

実在のWebページをページ単位で診断・書き直しした比較は、Japan Content Teardown(英語) で公開しています。本社チームへの説明資料としてそのまま共有できます。

翻訳調の直し方5つの手順

診断で翻訳調と分かったら、単語の言い換えで直そうとしないでください。原因は構文と情報順序にあるため、文章の外側から順番に直すのが近道です。次の5手順で進めます。

手順1・読者と目的を先に決める

誰が読む文章か(見込み客か、既存顧客か、社内か)、読み終えた人にどう動いてほしいのかを一言で書き出します。翻訳作業では原文の読者像を無意識に引き継ぎがちですが、日本の読者は原文の読者と同じではありません。ここが決まると、残す情報と削る情報の判断が速くなります。

手順2・原文を閉じて、伝える順序を組み直す

段落レベルで「日本の読者にはどの順で話すか」を決め直します。多くの場合、結論先出しの英語構成を、課題の共有から入る構成へ並べ替えることになるでしょう。原文を見ながら作業すると語順に引きずられるため、一度閉じてから構成メモを書くのがコツです。

手順3・主語と文末を日本語に戻す

無生物主語を人・行為の主語に置き換え、受動態を能動に直し、「〜することができます」を「〜できます」に締めます。「あなた」「私たち」は思い切って削除。チェックリストの項目01〜04を、この手順でまとめて潰せます。

手順4・記号とカタカナ語を仕分ける

「—」やセミコロンは、読点・括弧・文の分割で置き換えます。カタカナ語は全廃ではなく仕分けです。「日本の同業他社のサイトでも普通に使われているか」を基準に、業界の共通語(SaaS、CRMなど)は残し、装飾的なもの(レバレッジ、イネーブル)は日本語に訳します。

手順5・音読して、チェックリストで再診断する

仕上げに声に出して読みます。息継ぎに困る文、口にすると気恥ずかしい表現は、翻訳調の残りです。最後に10項目のチェックリストへもう一度かけ、該当が3項目未満まで下がれば合格ラインと考えてください。

ここまでは英語から日本語への話でしたが、逆方向でも同じ原理が働きます。日本語の導入事例を本社向けに英語化する場面については、導入事例の英語化ガイド で手順を解説しています。

機械翻訳・AI翻訳との賢い付き合い方

翻訳調を避けたいからといって、機械翻訳やAI翻訳を使うべきでないという話ではありません。使いどころを分ければ、これほど頼れる道具はないのです。位置づけは次の2つに分かれます。

参考訳としてそのまま使ってよい場面

社内共有・情報収集・原文の理解が目的なら、機械翻訳の出力をそのまま使って問題ありません。多少の翻訳調より、速さと量のほうがはるかに価値を持つ場面です。本社から届く大量のドキュメントは、まず参考訳で全体を把握するのが合理的でしょう。

下訳として人の直しを前提にする場面

顧客や見込み客の目に触れる文書では、機械翻訳の出力を「完成品」ではなく「下訳」と位置づけます。出力を土台に手順1〜5の直しを人間がかける前提であれば、ゼロから書くより速く仕上がることも少なくありません。逆に、下訳をそのまま公開すると、この記事で見てきたシグナルがすべて出ます。

使い分けの判断基準

分岐点は「読み手が社外の顧客・見込み客かどうか」の一点です。なお、特定の翻訳ツールの優劣は日々変わるため、この記事では個別の評価をしません。どのツールを使っても、原文に忠実なほど構文と情報順序が残るという構造は共通だからです。

FAQ

よくある質問

Q. 翻訳調とはどういう意味ですか?

翻訳した文章に原文(主に英語)の構文・語順・言い回しが残り、日本語として不自然に読める文体のことです。誤訳や文法ミスとは異なり、意味は正しく伝わるのに「日本語らしくない」と感じられる状態を指します。無生物主語・受動態・代名詞の多用などが典型的なサインです。

Q. 翻訳調は英語で何と言いますか?

translationese(トランスレーショニーズ)と言います。英語圏でも「翻訳されたと分かるぎこちない文章」を指す、やや否定的な言葉として使われます。本社の同僚に状況を説明するときは "It reads like translationese." の一言で意図が伝わります。

Q. 翻訳調かどうかを自分で確かめる方法はありますか?

本文の10項目チェックリスト(無生物主語・受動態・代名詞の残存・「〜することができます」の頻発・英語記号の残存など)で診断できます。3項目以上当てはまる場合は、顧客向けに出す前の書き直しをおすすめします。音読して息継ぎに困る文が多いかどうかも手軽な目安になります。

Q. 翻訳調の文章はすべて直すべきですか?

いいえ、用途によります。社内共有や情報収集のための参考訳であれば、翻訳調のままで十分です。直すべきなのは、顧客・見込み客の目に触れる文書(サービスページ・ブログ・導入事例・営業資料)です。読み手が社外かどうかを分岐点にすると判断しやすくなります。

まとめ

翻訳調とは、原文の構文と情報順序が残った「文法的には正しいのに日本語らしくない」文体のことです。原因は単語ではなく文の骨格にあるため、言い換えではなく、読者の設定と情報順序の組み直しから直します。診断は無生物主語・受動態・代名詞など10項目のチェックリストで、3項目以上該当なら書き直しのサイン。機械翻訳・AI翻訳は、参考訳と下訳に使い分ければ強い味方になります。

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