Foothold Japan · 1人目マーケの90日FHJ · コラム · 2026年7月
外資 × 1人目マーケター

【外資の1人目マーケター】日本市場の90日プレイブック

English version: The First Marketer in Japan: A 90-Day Playbook →

Quick answer

「マーケはあなた1人」で始まる90日は、順番で決まります。最初の30日は現状把握(本社アセットの棚卸し・営業ヒアリング・競合の日本語での見え方)。31〜60日は勝ち筋1つ(導入事例・note・SEOのいずれか)に絞って最初の成果物を公開。61〜90日は、その成果を毎月同じ型の英語レポートで本社に見せる仕組みを作ります。全体を貫く鍵は、「日本語に翻訳されたコンテンツ」と「日本向けに作られたコンテンツ」は別物だという事実です。

「日本のマーケティングはあなたに任せる」。そう言われて着任した日本法人に、マーケティングの前任者はいません。上司は海外にいて日本語が読めず、本社からは英語のブランドガイドラインとグローバル共通のコンテンツカレンダーが届き、四半期のリード目標だけが先に決まっている。海外に本社を持つ企業の日本チームで働く「1人目マーケター」の最初の90日は、多くの場合この状況から始まります。

世の中の「日本進出ガイド」は進出を検討する本社側に、「1人目マーケター論」は国内スタートアップに向けて書かれています。その交差点にいる人、つまり外資の中で・日本で・1人で立ち上げる人に向けた地図は、ほとんどありません。この記事はその空白を埋めるために、現状把握から本社への見せ方までを、当事者の目線で時系列に整理しました。

菅生晃大
執筆者
菅生 晃大(Foothold Japan)

SEO記事1,500本以上の企画・編集・執筆と、導入事例インタビューの制作を手がけてきました。海外企業の日本市場向けコンテンツを日本語ネイティブで制作し、海外本社への英語レポートまで一貫して担当しています。

目次を表示
  1. 1人目マーケターが相手にする3つの方向
  2. 最初の30日・現状把握という最初の成果物
  3. 31〜60日・勝ち筋1つへの集中
  4. 61〜90日・本社に伝わる見せ方の設計
  5. 90日でやらないことリスト
  6. 自分でやるか外部の手を借りるかの判断
  7. よくある質問
  8. まとめ

1人目マーケターが相手にする3つの方向

プレイブックに入る前に、いま置かれている構造を言葉にしておきます。ここが曖昧なままだと、90日の優先順位を自信を持って決められないからです。

1人目マーケターが相手にするのは、実は日本の見込み客だけではありません。

  • 日本の買い手。慎重に比較検討し、機能の主張よりも実績や証拠を重く見る相手です
  • 海外の本社。予算を握っているのに、あなたが公開する日本語コンテンツを1文字も読めません。数字と英語の報告だけで、あなたの仕事を判断します
  • 自分自身。施策の相談相手が社内におらず、優先順位の判断がすべて自分の机に集まります

実務でいちばん重いのは3つ目でしょう。仕事量そのものよりも、「この判断で合っているのか」を確認できる先輩がいないこと。前任者がいないので比較対象もなく、成果が出なければ市場のせいではなく自分の力量の問題に見えてしまう。この孤独こそが、1人目マーケターという仕事の実際のコストです。

だからこのプレイブックは、やることを増やすためではなく、やらないことを決めるための地図として書いています。90日でできることは限られています。限られているからこそ、着手の順番が結果を左右するのです。

最初の30日・現状把握という最初の成果物

着任直後は、何か新しいものを作って早く存在感を示したくなります。その気持ちはいったん保留してください。最初の30日の成果物はコンテンツではなく、現状把握のレポートです。土台を確かめないまま施策を積むと、後でまとめてやり直しになります。

本社アセットの品質棚卸し

まず、本社がこれまで日本市場に向けて出してきたものをすべて集めます。日本語サイト、翻訳された導入事例、広告コピー、メールテンプレート、営業チームが使っている資料。集めたら日本の買い手の目で読み直し、1つずつ次の3分類に仕分けていきます。

分類状態取るべき対応
日本向けに作られている日本の買い手を想定して書かれ、そのまま戦える維持して露出を増やす
翻訳止まり日本語は正しいが、英語ページの直訳だと分かる優先順位を付けて書き直し
逆効果機械翻訳の不自然さ、命令調のCTA、根拠のない誇張が残っている即修正、または一時非公開に

多くの場合、大半が真ん中の「翻訳止まり」に入ります。それが普通で、そこが伸びしろです。「日本語に翻訳されたコンテンツ」と「日本向けに作られたコンテンツ」は別物である。この事実を棚卸しで自分の目で確かめておくと、以降のすべての判断がぶれなくなります。

営業チームへのヒアリング

社内の営業メンバーは、着任直後のあなたにとって最良の一次情報源です。1人30分で構いません。商談で毎回聞かれる質問、失注のよくある理由、「これはお客様に見せられない」と感じている資料。この3点を聞くだけで、コンテンツの優先順位を決める材料がそろいます。マーケと営業の席が近いことは、小さな日本法人の数少ない構造的な強みです。使わない手はありません。

競合の日本での見え方の確認

最後に、競合が日本語でどう見えているかを確かめます。製品カテゴリや課題のキーワードを日本語で検索し、各社が導入事例を何本公開しているか、noteやオウンドメディアを運用しているか、日本語の発信が翻訳止まりかどうかを見ていきます。本社が把握している競合の構図と、日本語の検索結果に映る競合の構図は、しばしば別物です。ここのずれは、後で本社に日本市場を説明するときの一次情報にもなります。

30日目のチェックリスト

  • 全アセットの3分類リスト(日本語と英語の2列で作ると、本社共有がそのまま済みます)
  • 営業ヒアリングのメモ(よくある質問・失注理由・見せられない資料)
  • 競合の日本語での見え方サマリー
  • 「逆効果」に分類したアセットの修正、または取り下げ

31〜60日・勝ち筋1つへの集中

棚卸しが終わると、直したいものと作りたいものが山のように見えてきます。ここが90日で最大の分かれ道です。1人で全部に手を付けると、全部が中途半端に終わります。次の30日は、複利で効く資産を1つだけ作ることに使ってください。

外資の日本チームの立ち上げ期で候補になるのは、主に次の3つです。

勝ち筋向いている状況成果が見えはじめる目安本社への説明しやすさ
導入事例商談は発生しているが、「日本での実績」を聞かれて失注する公開直後から営業資料として効く高い(本社にもケーススタディ文化がある)
note運用認知と採用が課題で、検索より先に「人となり」を見せたい数ヶ月単位の積み上げ型中(noteという場の説明が必要)
SEO記事検索する買い手が明確にいて、受け皿のサイトが整っている数ヶ月から半年単位とされる中(先行指標の設計が必要)

迷ったら導入事例からという理由

どれを選ぶかは表の「向いている状況」で決めるのが基本ですが、迷ったら導入事例をおすすめします。日本の買い手は「自分と似た会社がすでに選んでいるか」を、機能の説明よりも重く見ます。取材にもとづく導入事例が1本あるだけで、営業の商談・Webサイト・本社への報告のすべてに使える。1人目マーケターの最初の成果物として、これほど汎用性の高い資産はなかなかありません。

制作を外注する場合の外注先のタイプと費用感は、導入事例の制作会社の選び方と費用相場で詳しく整理しています。

note運用を選ぶ場合

検索ボリュームのある市場がまだ小さい製品や、認知と採用が売上より先に立つフェーズでは、noteが有効な選択肢になります。日本独特のプラットフォームなので本社への説明にひと手間かかりますが、自社サイトを直さなくても始められる身軽さは立ち上げ期と相性が良いところです。外注も含めた運用の設計は、note運用代行の外注設計にまとめています。

SEO記事を選ぶ場合

検索する買い手がはっきりいる市場なら、SEOは最も複利が効く選択肢です。ただし、本社が英語で上位表示しているキーワードの直訳から始めるのは避けてください。同じ概念でも、日本の買い手が実際に打ち込む言葉は別であることが多いのです。まず日本語のサジェストと検索結果を実際に見て、買い手が本当に打つ言葉を確かめてから、数本の記事を深く作る。量より深さが定石です。

60日目のチェックリスト

  • 勝ち筋を1つ選んだ理由のメモ(本社への説明にそのまま使えます)
  • 選んだ資産の1本目が公開済み、または公開日が確定している
  • 手を付けないと決めた施策のリスト(やらない宣言も立派な意思決定です)

どの勝ち筋が合うか、迷っていますか? 御社の状況を伺って、90日の設計を無料でお答えします。1営業日以内に書面で返信・売り込みはしません。

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61〜90日・本社に伝わる見せ方の設計

最後の30日のテーマは報告です。身も蓋もない話をすると、日本チームの予算継続は、成果そのものと同じくらい「成果の見え方」で決まります。本社はあなたの日本語コンテンツを読めません。だから報告の質が、そのまま仕事の質として伝わるのです。

毎月同じ型の英語レポート

大きな成果が出るまで報告を控えて、出た瞬間にまとめて見せたい。そう考えたくなりますが、順序は逆が正解です。数字が小さいうちから、毎月同じフォーマットで、あらかじめ予告した指標を淡々と報告する。要素は4つで足ります。

  • 今月公開したもの(リンクと1行の英語サマリー)
  • 先行指標の推移(検索での見え方、事例の公開本数、問い合わせの質)
  • 来月やること(1〜3項目に絞る)
  • 日本市場についての学び1つ(本社が知らないはずの一次情報)

特に効くのは4つ目です。「日本ではこういう理由でこうなる」という観察を毎月1つ添えるだけで、あなたは「数字を報告する人」から「日本市場の解説者」に変わります。予算の話が始まる前に、その立場を作っておくのです。

数字の手前に文脈を置く

日本の数字を報告するとき、他市場との絶対値の比較だけを並べると誤解されます。日本のBtoBは比較検討が長く、意思決定に関わる人数も多いとされる市場です。この前提を最初のレポートで先に共有しておくと、立ち上げ期の数字の小ささが「異常値」ではなく「想定内」として読まれます。実測していない数字で報告を飾る必要はありません。前提の共有こそが、いちばん大事な「数字の翻訳」です。

英語で説明する手間を道具で減らす

「なぜ翻訳のままではだめなのか」「なぜ導入事例が日本で効くのか」を、毎回ゼロから英語で書き起こすのは大変です。そのまま転送できる英語の解説資産を手元に持っておくと、この負担が一気に軽くなります。たとえばこの記事には、同じテーマを本社側の視点で書いた英語版 The First Marketer in Japan: A 90-Day Playbook があり、上司にそのまま共有できます。導入事例を作った場合の本社向けの見せ方は、導入事例の英語化ガイドで手順まで解説しています。

90日目のチェックリスト

  • 毎月固定の英語レポートの型(1〜2枚)が完成し、2回以上運用済み
  • 見るべき先行指標を着任直後に予告済みで、その推移を毎月更新している
  • 日本市場の「学び」のストックが3つ以上たまっている

90日でやらないことリスト

順番を守るために、やらないことも先に決めておきます。どれも、善意と焦りから手が伸びやすいものばかりです。

  • 全チャネルの同時着手。広告もSNSもウェビナーもSEOも、と広げるほど1つあたりの品質が下がります。90日は1つに絞る期間です
  • 本社コンテンツの一括機械翻訳。公開本数は増えますが、「翻訳止まり」の在庫が増えるだけで、信頼はむしろ目減りします
  • 大型の年間契約。外注が必要でも、月単位で試せる相手から始めるほうが安全です。年間契約は勝ち筋が見えてからで遅くありません
  • 受け皿を直す前の広告出稿。ランディング先が翻訳止まりのままでは、広告費がそのまま漏れていきます
  • 完璧な戦略資料づくりに1ヶ月使うこと。戦略は棚卸しと1本目の実物から立ち上がります。資料が先ではありません

このリストの裏返しとして、海外企業が日本進出でつまずく典型パターンを日本市場参入の失敗パターンにまとめています。「なぜ今それをやらないのか」を本社に説明するときの材料としても使えるはずです。

自分でやるか外部の手を借りるかの判断

ここまでの90日を1人で走り切るのは、正直に言ってかなりの仕事量です。どこかで外部の手を借りる判断が出てきます。線引きの基準はシンプルで、「社内にいないとできない仕事か」です。

社内に残すべき仕事

  • 戦略と優先順位の決定
  • 本社との関係づくりと毎月の報告
  • 営業チーム・顧客へのアクセス
  • 「これはうちのブランドとして出せるか」の最終判断

外部に出せる仕事

  • 日本語ネイティブによる執筆・取材(導入事例のインタビューを含む)
  • 日本語での検索調査とSEO記事の制作
  • 翻訳コンテンツ・AI生成コンテンツの編集QA
  • noteなど、継続運用の実務

外注先を選ぶときの確認点は2つあります。1つ目は、本社向けの英語レポートまで出してくれるか。ここがそろうと、61〜90日で作った報告の仕組みに外注の成果がそのまま乗ります。2つ目は、月単位で小さく試せるか。最低契約期間の長い相手は、勝ち筋が確定してからの選択肢と考えるのが安全です。

Foothold Japanは、この線引きの「外部に出せる仕事」を月単位で引き受けるサービスです。導入事例・note・SEO記事の制作を日本語ネイティブが担当し、本社向けの英語レポートまでを一つの工程として納品します。プランの中身は状況に合わせて柔軟に調整できますので、料金の考え方は料金ページをご覧ください。

FAQ

よくある質問

Q. 外資の1人目マーケターは、最初の90日で何から始めるべきですか?

新しい施策より先に現状把握です。本社が日本市場向けに出してきたアセットの品質棚卸し、営業チームへのヒアリング、競合の日本語での見え方の確認。この3つを最初の30日で終えると、残りの60日の優先順位が自然に決まります。

Q. 本社から届く英語コンテンツは、翻訳すればそのまま日本で使えますか?

そのままでは使えないことが多くあります。日本語に翻訳されたコンテンツと、日本の買い手向けに作られたコンテンツは別物です。文法的に正しくても、トーンが命令調だったり、誇張表現が日本のBtoBの買い手に不信感を与えたりするケースが目立ちます。翻訳の後に、日本の読者向けの書き直しを挟むのが安全です。

Q. 90日で大きな成果が出なかった場合、本社にはどう説明すればよいですか?

先行指標を最初から報告に組み込んでおくことが鍵です。日本のBtoBは意思決定が慎重で、コンテンツ施策の成果が数字に表れるまで時間がかかるとされています。着任直後に「最初の四半期は基盤づくりで、見るべき指標はこれ」と英語で予告し、毎月同じ型で報告していれば、90日時点の数字が小さくても想定どおりの進捗として伝わります。

Q. 1人目マーケターは、どこまで外注してよいのでしょうか?

戦略・優先順位づけ・本社との関係・営業や顧客へのアクセスは社内に残し、日本語ネイティブの執筆・取材・SEO調査といった専門実務は外部の手を借りるのが現実的な分担です。外注先は「本社向けの英語レポートまで出せるか」「月単位で小さく試せるか」の2点で選ぶと、稟議も通しやすくなります。

まとめ

外資の1人目マーケターの90日は、順番がすべてです。最初の30日で現状把握(アセットの3分類・営業ヒアリング・競合の日本語での見え方)、31〜60日で勝ち筋1つ(導入事例・note・SEOのいずれか)への集中、61〜90日で本社に伝わる英語レポートの型づくり。全体を貫く鍵は、「翻訳されたコンテンツ」と「日本向けに作られたコンテンツ」の違いを見抜くことです。やることを増やすのではなく、やらないことを決める。その判断の連続が、90日後のあなたの立場を作ります。

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